秋が深まるこの季節、在所の父ちゃんらちは決まってソワソワし始める。海を眺めては眺めては、凪の早朝になると集合を約束していたかのように海岸へ集まる。
そのわけは、タコ。
この時期、海が荒れた後の凪に、浅瀬へやってくるタコを「スカス」。私の在所では「タコスカシ」と言ったり「タコトリ」と言ったりする。「スカス」とは「騙す」ということ。竹の棒の先に赤い布やカニの疑似餌を付けて岩や藻の下に隠れたタコをおびき寄せ、騙されて飛びかかってきたタコを棒の先の針で引っ掛けて獲る。人によって集落によって、1刀流と2刀流や、赤布流とヨモギ流など、いろいろな流派があるけれど大体のところは一緒。子供の頃から工夫を重ねてそれぞれの方法論を確立している。(;゚д゚)ゴクリ
私も誘われて獲ってきた。実はこれまでにも体験したことはあったけれど、ひょいと浅瀬に飛び込んで来たタコを引っ掛けて獲っただけで、タコを「スカした!」という気持ちになったことはなかった。これ、スカス感覚が分からないと、はっきり言って何をしてるのか自分でも全く分からない状態。海に向かってぼーっと突っ立って、竿をちょんちょん下ろしてるだけ。何も起きない。すぐ飽きる。でも在所の人に教わっていろいろと試しているうちに、疑似餌に向かって足がにょろ〜と出てきたり、がぶぅっと持ってかれたりし始めて、この日は楽しい。
私の目には見えないタコを発見したり、体表の色をコロコロ変えるタコの擬態を見抜いたり、竿に付ける疑似餌の適当な大きさだったり、やっぱり長年やってる名人は知恵が豊富だった。
お前はこんなに海の近くに住んでいるというのに、なぜ海に来ないのか。海が嫌いなのか。と言われ続けて、はや5年。やっと、やっとぉ、海遊びの仲間として認められたような日だった。その日の午後街に出てバッタリ会った在所の父ちゃんとも、「おい、今日は何杯だった?」という話で盛り上がる。
さっそくヌメリを取って茹で、タコ飯に。
命をいただきまーすv( ̄Д ̄)v
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