災害再び

2024年1月1日に大地震に襲われた能登半島でしたが、同じ年の9月に大水害がやってくるとは誰も予想していませんでした。私の住む珠洲市狼煙町は、公共水道が止まり、道が崩れ孤立状態となりました。地震の際は復旧作業に入るまでに時間が掛かったことが問題となりましたが、皮肉なことに、今回はボランティア団体が既に現地にいたので、道路の復旧はとても早く行われました。

土砂崩れで川が堰止められたせいで、一面河のようになった田んぼが数枚有ります。珠洲市の他の地域では、一面の田んぼが全て土砂で埋まって形がわからなくなったところや、家が埋まったところなどありました。この辺は、数ヶ月たっても、治っていません。

私の田んぼでも被害があり、人の頭ほどの石が大量に流れ込み、収穫前の稲の1/3程を埋めてしまいました。

田石拾い

自分で出来ることは、人に頼らずやるように心がけて来ましたが、今回は無理。SNS上や、口コミでボランティア参加を呼びかけて、田んぼの復旧作業を手伝ってもらいました。

水害直後の様子

田んぼに石がゴロゴロ入った。重機の入りづらい田んぼ。途方に暮れた。

拾い出した石

この日は11人で1日作業をして、手作業でこれだけの石を拾い出しました。人の力はすごい。

土手を広く高く

引き続き何度かボランティアの方に手伝って貰いました。表面の石を全て拾い出したあとの、土砂に埋もれた石を拾い出すのは、無理と判断して、土砂ごと用水の土手を増設するために使いました。元の土手よりも広く高く。

沢山、沢山の方がボランティアに来てくれました。田石拾いに参加してくださった皆様、本当にありがとうございます。

新しい環境をつくる

11月29〜12月1日の3日間、水害で決壊した土手の補強と、水路の支流を作る工事を行いました。

地球守で活動する大形さんの指導のもと、力自慢の田んぼ仲間に助けられて、作業をします。有機土木と呼ぶらしいです。

資材は身の回りから。田んぼから拾い出したグリ石、解体する家から救出した束石、田んぼ脇の山や畑の周りから切り出した木、麻袋、田んぼで採れた藁、近所で集めた落ち葉、竹を焼いて作った炭。

土手の補強

土手の補強は、大小の石を使った通気通水性を持つ仕掛け。増水をただ反射させるのではなく、一部は地下に浸透していくように促しつつ、土手は守るというねらい。

束石とグリ石を入れる分の土手を切り戻す

切り戻す時に出た土を麻袋に入れておいて、後で段々土手を作るのに使う。草の生えた表土は別にとって置いて、表土として移植する。

杭で木を留めた中にグリ石を敷いて、束石を設置
地形は水平垂直が安定するので、斜面ではなく、段をつくる

傾斜だと、雨が降れば、土を流して、崩していってしまう。土地が、斜面よりも水平垂直にしたほうが安定するというのは、植物が生えて、通気性がある地面の場合に成立するのだと思う。

束石の土手側にグリ石の裏込め

植物の根っこが入って来やすいように、藁を差し込み差し込みしておく。

このあと、近隣でよく育つ水を好む木である、茶の木と猫柳を挿し木して、長期的な土手の補強をする予定。石を留めている杭が朽ちる頃には、木の根が取って代わって、石を捕まえる狙い。

新たな水路

新たな水路は、増水時に現在の水路へ水が集中するのを避けるためであり、この谷内田を造成するより昔に川が通っていたであろう谷底付近に水路を設け、本来の水と空気の流れを取り戻すことで、谷地の安定を促すためでもある。水路には所々、焼き杭を打ち、谷底との水と空気の縦浸透をより促す。地下に浸透していく構造があれば、地表で爆発することが減るという理屈。

ちゃんとした焼き杭を初めて作った

保米缶を半割にして重ねて炭化炉を用意した。ある材料で即席で作ったが、なかなか良い出来だった。燃料として竹を燃やしつつ、焼き杭もつくる。竹は炭としても使いたいので目減りしないように、どんどん追加する。焼き杭というのは、どの程度焼けば良いのか今まで分からなかったが、表面がまんべんなく熾炭状態になるまで焼くということ。杭の長さ半分ちょっとまで炭化炉に入れておいて、焼けたら炉から取り出して、自然鎮火させる。今回は風があるせいでなかなか消えなかったので、ホースの水で消火した。熾炭の火が消えたら、残り半分を同様に焼く。満遍なく焼くのと、焼きすぎて細らないよにする兼ね合いが難しい。

焼き杭を使うのは、腐りにくいということもあるが、焼けた木の表面にできる無数のヒダが、水と空気の動きを作るからということ。

水路の支流を掘る

これまでは田んぼ脇の用水に低いダムを作って、パイプで水を引いていたが、パイプもダムも、なにせその場所の川底を目詰まりさせてしまうことと、いつのまにか土手が低くなってきたことが、氾濫の原因のひとつだったと思う。そこで、水の採り方を根本から変えることにして、パイプは撤去し、もっと上流から水を引き入れることにした。

水路から落ちるとこは滝壺のように

ここは落差があるので、水底はグリ石で保護。滝壺のように水に酸素が入り、水圧が滝壺にかかることで、地下水への浸透を図る。杭も打ち、さらに縦浸透を促す。

水路の落ち口は3面をグリ石で補強

水路の全部をグリ石で保護したいところだが、今回の限られた時間で、特に土の削れそうなところを重点的に補強した。

感謝

大形さんには、山林の涵養機能を増やす意味での里山との付き合い方や、今回作ったものとの付き合い方など、いろいろと教えていただきました。できた終わり、ではなく、これで良いのかどうか、見回っては手を入れていくことが大事。

さあ、なんとか来年度も田んぼが出来そうな形になりました。

大形たくちゃん 田谷たっちゃん たやよっちゃん 須藤マーボー 皆さん、ありがとうございます。企画してくれた、 黒岩シギー にも感謝です。

追伸

ところで、私の田んぼを始め珠洲の外浦のこの辺の土質が、大形さんのこれまでの経験とは、全く違ったという話が新鮮な驚きだった。田んぼというものは、重粘土質で当たり前だと思っていたのだけど、もっとサクイ田んぼの方が一般的だというのだ。サクイ田んぼでは、シルトが目詰まりを起こして、嫌気状態となり、グライ化するという。しかし、この辺の田んぼは粘土とシルトで出来ているので、詰まるも何も、最初っからそういう状態なんだということが、どうも一般的ではないらしい。田んぼって「目詰まり」してくれないと、水が貯まらないのではないの? この辺、他の地域ではどうなっているのか、興味が湧いた。

さらに追伸

3日後には、猪が一部土嚢を引っ剥がしていきました。大形さんからは、増水や猪が、今回手を入れたことに評価判定をくれると言われてましたが、そうそうにダメ出しをいただきました。おぉ。そこ塞いじゃダメなのか。

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