堆肥とは

植物を主原料に作る腐植土を堆肥という。牛や豚の糞を主原料にしたものは厩肥と呼ぶ。どちらも、微生物に分解され、腐熟して土のようになったもの。堆肥は、窒素含有量が厩肥に比べて少ないので、即効性はないが、土壌をバランスよく改良する力を持っている。野菜の成長に必要な栄養を、バランス良く含んでいる。また、落ち葉や草といった、田畑で大量に手に入ってしまう材料で作ることができる。

自然農ガットポンポコでは、育苗の土に使ったり、苗の定植の際に植え穴に潜ませたり、畝の表面を覆うマルチとして使っている。

落ち葉堆肥の作り方

踏み込み温床について

私の落ち葉堆肥は、春先の育苗に使う踏み込み温床から始まる。踏み込み温床を簡単に説明すると、稲藁、落ち葉、窒素資材(鶏糞、尿、米糠など)、と水を混ぜることで発生する微生物による醗酵熱を利用した、育苗の施設。

踏み込み温床って何?という方は、はこちらの記事で

踏み込み温床 のち 植物性堆肥

踏み込み温床を、育苗に使い終わったあとで、ビニールトンネルを外さないで置いておくとどうなるか、実験中。雨ざらしにはならないが、穴の中なので、どう醗酵するか。こちらは別の記事で。

4月

去年の春に作った踏み込み温床の中身は、穴の中で一年間雨晒しにしていた。穴の中では、途中から嫌気的な菌が優勢になるのか、分解がとても遅い。葉っぱは1年たっても原形を保っている。しかし、1度嫌気発酵になった堆肥も、好気的環境を整えてあげれば、好気発酵に変わるようなので、切り返し(堆肥の天地をひっくり返すこと)を兼ねて、地上の新しい堆肥枠へ移動した。

写真1 堆肥枠

この堆肥枠は、近所で定番の作り方を、真似して廃材で作った。とても地味な道具なので、10年暮らしていて、始めて、存在に気付いた。なぜか、どこの家も一緒だった!

落ち葉が十分湿っていれば、均等に入れていくと、落ち葉の自重でキューブ状に固まるので、写真のように枠を上げていっても、崩れない。掘り上げた堆肥の水分が多すぎるので、乾燥した稲藁と交互に挟みながら積んだ。

この枠は、中身を増やすときは枠の高さを上げられるし、中身の堆肥を出すときは支柱を抜けばパカッと外せる。便利。

完熟落ち葉堆肥、秋作の野菜に間に合うといいな。

9月

春に積んだ落ち葉堆肥が、育苗にちょうど良い程度に分解された。

写真2 篩いに通ったもの

夏の間、藁を挟み込みながら、通気のため、さらに2回切り返しをした。藁は分解し易いので、すぐに見えなくなる。落ち葉は完全に分解するには3年ほどかかるので、細かくはなっても、葉っぱと分かるものがまだ見える。なので、粗い目の篩いに通して、通ったものを育苗ポット、残ったものは畑の畝のマルチに使う。完全に分解されたわけではないけど、この状態で土の中に入れても大丈夫。野菜の根っこは、落ち葉堆肥の中で健康的に育つ。

写真3 体積は半分に減った

そのまた1年前の春に踏み込み温床に仕込んだものなので、1年半で落ち葉堆肥が出来上がった。あぁ良かった秋作に間に合った。

草堆肥の作り方

落ち葉を大量に集めるのはできなくても、草なら田畑の回りでどれだけでも手に入るという人は多いと思う。そこで、MOA自然農法を長年実践されてる大先輩農家Sさんに教わった草の堆肥の作り方を紹介しようと思う。

草を刈ってその場で数日干し、半枯れにしたのを集めて来て、仮払い機で適当に小切ったのち、ひと夏を越すまで山積みにしておく。

写真3 畑の隅の草山

生の草を積み上げると嫌気発酵でドロドロになって堆肥としては使えないので、刈った草が枯れてから山積みにする。といっても、完全に枯らす必要はなく、半枯れで良い。夏場なら3日ほど草を刈ったままにしておき、乾いた感じになったら、集めて裁断して山積みにする。

写真4 エンジン式の裁断機

田んぼに稲の藁を返す場合など、1度に大量の裁断をするには、写真4のエンジン式裁断機を使う。山積みひとつ程度の量なら、乾いた草を1ヶ所に集めておいて、仮払い機の刃を縦に当てて裁断する。

MOA自然農法では、畑と同面積の草原を確保しておき堆肥を作ることを推奨している。Sさんは、田んぼの畔の斜面がかなり広いので、別途草原を確保せず、畔草を頑張って刈って集めて使っている。

落ち葉は良い状態の堆肥になるのに時間がかかるが、草はひと夏を越えれば堆肥として使えるようになるので、落ち葉堆肥と草堆肥は別々に作っている。

写真5 山の堆肥枠

写真5のような堆肥枠が数個ある。畑に空いた場所がないときは、ここに持ってきて、堆肥を作る。1辺が約2メートル。基本的に野積みと変わらず、屋根掛けも、排水もしていない。枠を使うのは、高く積み上げても風に飛ばないし、堆肥山に周りの草が侵入しにくいので、堆肥を使うときに草と区別できるため。

写真6 家の前の畑の玉ねぎの苗代

堆肥は下の方が早く熟すので、土の中にすき込むには、下の方のものを使う。Sさんによると、完熟堆肥よりも完熟一歩手前のものに、力があるようだ。これを、玉ねぎの苗床や本田、白菜を植える予定のところなどに、1ヶ月前を目処にすき込む。といっても春先は雪があって間に合わないので2週間前になっている。

写真7 畝間のマルチに未熟な草堆肥を使う

目の粗いものはマルチに使う。使いながら畑で完熟させる。畝間に敷いて、草を抑えつつ完熟させることもある。完熟すれば、土寄せに使うなどする。

写真8 9月の終わりの冬瓜

積んでおいた草堆肥をどけた所で、カボチャでも白菜でも育てると、とてもよくできる。

日本版のコンポスト運用

Sさんの最後の話が、 Linda Woodrow | Permaculture Home Garden で紹介されているコンポストの使い方と似ていて、印象に残った。

Permaculture Home Garden では、乾いた草、生の草、鶏糞や牛糞の3種類を、適度に湿らせながら、順番に何層にも積み上げて山状にするコンポストが紹介されている。窒素分を含ませるので、醗酵が早く、温度が上がる。10日に1度切り返しをして、その度に、コンポストをどけて空いた場所に野菜を定植していく。その場所は適度に肥料が効き、高温で土表面の草の種が死んでいるので、野菜を育てやすい。3回切り返しをして、約20日で完熟堆肥が出来上がるという方法。

10日ごとに切り返しと野菜の定植を繰り返すことで、作付け面積を確保するが、適度な湿度の管理が必要。この方法は、乾燥したオーストラリアで考案されたもので、梅雨のような長雨のある気候帯では、うまく好気醗酵せず、温度が上がらないことがある。温度が上がって短期間に醗酵しないと、窒素は結局雨に流されてしまい、1ヶ月で完熟はせず、野菜の定植の計画もずれていってしまう。だから、野積みではなく、移動できる堆肥枠と屋根を用意する必要があると感じてきた。

Sさんの草堆肥は、ひと夏を越える必要があり、また堆肥をどけた場所にも草が生えてくるという点で違うが、長雨の中に堆肥を野積みしても、Permaculture Home Garden と同じように、堆肥をどけた場所に作付けしていくという運用ができると思う。

1年目

畑全体の草を刈って乾かして裁断したら、1つ目の畝全体にこんもりと積み上げ、ひと夏を越す。

秋に、堆肥の山を、2つ目の畝全体に切り返しを兼ねて移す。堆肥をどけた、1つ目の畝に作付けをする。堆肥の嵩が減っているが、同じように畑全体の草を集めて堆肥の上に追加する。

2年目

春に、夏を越していないが、今度は堆肥化が進んでいるので、堆肥の山を1つ目、もしくは3つ目の畝全体に移し、堆肥をどけた2つ目の畝に作付けする。畑全体の草を集めて堆肥の上に追加する。

秋に、夏を越した堆肥を次の畝全体に移動して、堆肥をどけた畝に作付けする。畑全体の草を集めて堆肥の上に追加する。

この方法の良い点は、切り返しの回数が少ないので、肉体的に楽なところ。さらに、この方法だと、未熟な草堆肥の中で野菜を育てる自然農で問題になる、コオロギ、ナメクジ、ダンゴムシによる食害を減らせると思う。

いろいろな堆肥枠

写真9 バイオダイナミック農法のマリア・トゥーンの堆肥枠

地面に杭を4本刺して、角材を写真のように互い違いで壁状に積み上げ、その中に堆肥の材料を入れていく。これなら通気が充分に行えるし、屋根をかけるのも簡単にできる。釘を使わないので、組み立て分解が簡単にできる。堆肥をどかした場所に残った杭は、トマトやキュウリなど蔓性野菜の支柱として使えるし、引っこ抜いて次の場所に使ってもいい。杭と杭の間隔(箱の1辺)が約1メートル。

写真10 大先輩Sさんの堆肥枠

網工場で網を運ぶのに使われている箱。底があり、土から浮くようになっていて、通気性がある。フォークリフト・パレットを5個つなぎ合わせて箱にしたような構造。屋根掛けが簡単にできる。1辺が約1メートル。

堆肥枠に屋根をかけるべきか

フェイスブックで以下のような質問をいただいた。

北側の裏庭で、刈った草を積み上げようか思うのですが、堆肥置場は日当たりと関係ありますか?

堆肥は、暖かくて、適度に酸素と湿度があると好気醗酵をして「早く」分解する。日向で、密閉してなくて、屋根があると、ちょうど良い条件になる。

生の草を山積みすると、乾燥した気候のオーストラリアなどでは好気的発酵になっても、日本の気候では、水分が多過ぎて、ドロドロになるとか、ありの巣になることが多いので、野積みするときはSさんのように、草が乾いてから積んだ方がいい。それでも、Sさんの草堆肥はひと夏を越えれば、下の方が堆肥として使えるようになるものの、上の方は未分解のままだ。

好気醗酵に最適な湿度は約60%。雨ざらしだと、水分が多すぎて嫌気醗酵に傾くので、分解が「遅く」なる。湿度を約60%に保つと、使える堆肥が、増えるはず。

屋根を掛けるなら、隙間だらけで、ただ載せただけ、みたいので充分。写真1 の藁は屋根のつもりだったけど、藁をフワッと乗せたぐらいでは屋根にはならなかったので、堆肥の足元を空気に曝すことで排水=換気を計った。結果的に今年の天候では、これでなんとか分解してくれた訳だけど、雨の多い日本で湿度を最適に保つには、屋根はあった方が良い。屋根以外では、斜面に積んだり、大きな木の下に積むとましになる。

主役は見えない生き物たち

私がしているのは、落ち葉や草を集めて、積むことだけ。あとは見えないこびとが、いい仕事してくれる。

落ち葉や草を分解して堆肥に変えてくれる、小さな虫や菌や細菌のおかげで、沢山の植物や動物が地球環境で生きていける。人間が生態系の頂点に君臨するなどとは、まるで思えない。見えない生き物たちのお陰様々。

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