奈良まで自然農の勉強に通うことにした。
【遺跡の畑】
粘土質の畑なので、畝はすごく高い。排水の溝はしっかりと畑の外へ続く。畝幅は1.2mと4m。土がしまるので畝の上はできるだけ踏まないが、作業をするときは堂々と踏む。畝を高く作り直す際は、草や亡骸の層、土じゃないところまでを一旦避けてから土を盛る。できるだけそれはした方がよくて、生の植物をサンドイッチはやはりよくない。
玉ねぎの補いは活着後すぐに1回だけ。冬までに玉の大きさが決まってしまう。見えている部分は、苗を植える時点で既にこのくらいの大きさ。
【田んぼの畑】
茄子のあった畝。株間が広い。1mほど。茄子は枝だけ切って落としてある。抜いたりせずに、できるだけそのまま朽ちさせている。
この垣根は風除けかと思ったら、散歩犬避け。長ネギは株分けで数年いけるけど、5年ほどしたら種から育て直さないと、どうも葉が固くなってしまう。
この畑は元は左の田んぼの一部だった。この広い枕畝と、畑の畝を高くすることで、畑作物が栽培できる。田んぼの方は35年間のうちに亡骸の層が重なって盛り上がり、田んぼの方が畦よりも高くなってしまったので、畦を高くしないといけない。田んぼの亡骸の層は、表面だけ見ると腐葉土と土が混ざっているような、土の中に枯れ草が混じっているような感じ。
【近所の風景】
田んぼからの帰り道に見かけた籾殻貯蔵。
【果樹園の畑 ※ここの土はすごい。森の土のようだ。】
パプリカのあった畝。ナンキン(南瓜)をやる予定なので、今のうちに畝の中央だけ草を刈って鞍をつくっておく。枯れているところが草を刈ったところ。あらかじめこうして地上部を抑えておくことで地下の根っこも抑え、作物の根が成長しやすくなる。畝の肩の草はお腹程の高さに伸びてウリバエ防御壁になる。
豌豆の支柱。伸びるにつれて3段目まで作る。
杭に絡めた縄に、藁束の穂先側を縛る。
上側が田んぼなど水の差す畑の場合、畑の上端にしっかりと排水溝を掘ることが大事。ジャガイモがほとんど腐ってしまったという話しをしたら、畝を狭くするか高くするか、排水がちゃんと行われているか確認する必要がありますねという回答をいただいた。ジャガイモは低温に強いが、湿気には弱い。
印象に残った話
一回助かってます
低くなった畝に高さを出したいというときには、例えば溝の土を掘り上げて里芋の土寄せに使うということをすれば、一回助かってます。
この「一回助かってます」という言葉を何度か言われていた。一挙両得三得になるような仕事の仕方をいくつも実践されているように感じた。
例えばこういうことかな。「立ってこれをして、それから座ってこれをしてとしていたのを、座ったままできると、一回助かる」。
天候に応じる
農家は天候を見ないとあきません。
土をいじるのは雨が降ったら三日ほどおいてから。ジャガイモやサツマイモは、湿気に弱いので植えるのも掘るのも、晴れが三日続いたら。どろどろの土を掘ると芋の皮が瑕ついて腐りやすくなってしまう。
川口さん、オラ在所の爺ちゃんと同じこと言うとった。
地域興しと駒
石川県で自然農をされている方がいないか尋ねたら、集落全体で自然農に取り組む地域興しをしようとしているヤマギシさんという方がいるらしいということを教えていただいた。石黒さんも似たような話をしていた。どこにいらっしゃる方だろう。お会いしてみたい。
手作業の農作業に熟練した集落の年寄りを雇えば、手間のかかる自然農でも沢山の面積をやれていいなぁと私も思っていると話したら、自己実現のために集落の人を使うというのではないですよ、自分はその場合コマなんですよ、と釘をさされた。みんなが楽しく輝くためにその中心に立って、コマとして働く。あぁ。そうか。そういうことか。
出来る、と、出来ない
夫婦二人で自然農をしていますというと、それはいいですねー、二人だとできることがありますねー、僕は一人だったからねー、と羨ましそうにおっしゃっていた。一人じゃなきゃできない、二人いなきゃできない、とうのは違いますけどね、とも言われていた。
やり切る
お金がまだついて来てないのだとしたら、自分のなすべきことをまだやりきっていない。自分のなすべきことをやりきっていれば、お金はあとからついて来るというのが、川口さんの信念で、実際にその通りできてきたなあというお話だった。
お金のことをやっていたら、なすべきことをする時間がありませんでしょ。
地這胡瓜を作る理由
僕は棚に作る胡瓜は作ったことがなく、地這い胡瓜を作ってます。
私は地這い胡瓜は場所を取り過ぎるという印象を持っていたが、川口さんは違った。「その分沢山なります」。春、夏、秋。年に3回蒔けて、長い間栽培できる。棚を作る手間がいらない。四葉系のほっそりしたのと違って実が大きい。味がいい。などの理由を挙げておられた。「最近はこういう迫力のある野菜は避けられますね。気持ちが負けてしまうんでしょうね」。
一番の理由は
美味しいから好きですねん
目の前のこの一本
苗を植えるときに畝の端っこまで植えるんだという目標を持ってやると余計遅くなる。目の前のこの一本を植える、ということをやっている方が早く植えられる。
草を刈るとき、種を蒔く時も同じ。
石黒さんが「doingにとらわれずにbeingをやる」といっていたのと同じ。サンチャゴ巡礼が一歩一歩と歩いてればいつの間にか850km歩けていたというのと同じ。毎日少しずつ、コツコツと、着々と。
稲の芽出し
稲の種籾を芽出ししてから撒く方法についてどう思うか尋ねたところ、種籾が乾いて痛んでしまうのでようやりませんということだった。晴天の日にでも蒔こうならてきめん。水苗代なら乾かないのでいいけど、途中で水が切れると土が締まって苗取りが非常にしずらい。
麦葺き
川口さんのお宅茅葺きですか、と尋ねると大和は茅がとれないから麦葺きなんですということだった。稲藁より麦の方が強い。補修は稲も使う。「僕もずっとやってましたけど、トタンを張ってしまいました」
足るを知る
参加者に専業の自然農農家ですという方がいらっしゃって、話をする機会に恵まれた。「その作付け面積だけで生活していけますか」と質問したら「やれる範囲でやればいい」と教えていただいた。そうかぁー!
「妙なる畑の会 見学会」これから参加される方へ。当日の流れ
11時10分に巻向駅に集合。弁当持参ください。申込みは不要です。雨天でも行います。
という情報だけを頼りに、奈良まで車で7時間掛けて行くのは若干不安だったけど、雨でもちゃんと開催された。ヾ(▽⌒*)。10時半に到着した時は、無人の駅だったけど、あれよあれよと30〜40人ほどの人が集まった。
巻向駅は改札のない小さな駅なので妙なる畑の会の参加者が集まってるんだなということはすぐに分かった。
駐車場をどうしようかと思っていたが、近くの大工さんらしき敷地に案内していただいた。
お弁当は川口さんの田畑を見学したあとで、スライド上映の前に、川口さん宅の「小屋」という名前の立派な建物内でみんなでいただいた。
スライドが終わったら17時になっていた。都合のある方達はそこで帰られたが、数名はそのまま残り、自己紹介がてら川口さんに相談という流れになった。
全員話し終わったら20時だった。おうっ、帰らねば。まだ残って話している方もいた。
感想
自然農を始めて5年。初めて、川口さんにお会いしてきた。
5年前の私は「正解以外は全て間違い」という頑なさを持っていたので、川口さんに会ってから自然農を始めると視野が狭くなりそうで、まずは自分でやってみることから始めたのだった。
2年前から、隣県の富山の石黒さんのところへ通うようになり。そして5年がたってようやく、たったひとつの正解に見えるものは、それぞれの自然や天候に時々に応じているひとつの表れにすぎない、というところに立てるようになった。
ここにきてお会いした川口さんは、自然農の開祖という雰囲気はまるでなくて、我が在所の爺ちゃんとなんら変わらぬ、長い間農夫として生きてきた経験がにじみ出る好々爺という感じの柔和な方だった。
「あぁ。それは僕もまだ良く分かりません。」というときの、にやっとした笑い方がとても好きだ。
これから1年間通って、しっかりと学ぼうと思う。
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