畑や道端のそこここに生えて、根っこでも種でも増えてしまい、一旦生えると根絶が難しい植物、カラムシ。別名チョマ(苧麻)。「苧麻」という漢字の通り、麻のようなものとして、繊維が布製品に利用されてきた歴史を持つ。ってことを知らない間は、なんて厄介なんだろうとしか思わない植物。そのカラムシを何やらするというので、能登町の真脇遺跡体験館で、高田館長から、カラムシ仕事の手ほどきを受けて来た。

カラムシの葉っぱ

収穫

繊維を取るカラムシは、春から刈らずに伸ばしておいたものを、梅雨時に地際から刈り取る。うっかり草刈りに刈ってしまったあとの2番子は、繊維が短いため適さない。花が咲いたら質が落ちるので、その前までが適期。高田館長に、いつから刈り取って良いのですかと尋ねたら、「カラムシに聞けば教えてくれる」と言われたので、まだ良くわからない。能登町では、6月下旬〜7月上旬。

浸水アク抜き

浸水

刈り取ったカラムシは、その日のうちに葉っぱを落として長さを揃えて水に浸す。乾かしてはいけない。切りそろえる長さの基本は、1200mm(ひとひろ)にすると仕事がし易い。これより短いのも揃えておけば使える。高田館長は、20本を1束に縛って、トロ舟に浸していた。水に浸すのは、乾燥防止と灰汁抜きのため。出来るなら湧き水の流水に浸すのが良い。元と末を混ぜないように向きを揃えて束ねること。

オカキ

一晩漬け置いたカラムシの表皮を手で裂き剥がし。動画のように繊維を取り出すオカキをし、吊して乾燥させる。乾いてしまえば、残りの作業は一年中いつでも出来る。常に元と末が混じらないように、揃えておくこと。

表皮を剥ぐ
吊るして干す

叩く

干し上がったカラムシ繊維を叩いてほぐし、手で揉んで解すと、割とフワフワになる。ここまで来ると、ひとひろの長い長い繊維に感動する。ここでもやはり元と末を揃えておくこと。

乾燥したカラムシ繊維
叩く
叩くことで繊維が1本1本に解れてフワフワになる

糸績み

フワフワ繊維の束から適量を取り出し、ウム。績む(ウム)とは繋ぐ作業。

フワフワ繊維の束から、作りたい糸の太さに応じた量の繊維を取り出す。同じ量の繊維を2つ(ア と イ)取り出す。取り出した繊維(ア)の元側5センチほどを半分に割く。もう片方の繊維(イ)の末側5センチも半分に割く。端5センチが2又(A と B)になっている状態。繊維(ア)の(A)と、繊維(イ)の(A)を重ね合わせて人差し指と親指ではさみ、上になった親指を手前から奥に動かしてねじる。同じように、繊維(ア)の(B)と、繊維(イ)の(B)を重ね合わせ、手前から奥にねじる。ねじると、とりあえずくっついたような状態になる。さらに、(A)と(B)を合わせて、手前から奥にねじる。このねじることを「ヨリを掛ける」という。繊維にクセがしっかりつくと、これでもう解けない。不思議だね。

必ず、元と末をウムこと。短い繊維もあるので、元は繊維が多いため太く、末は繊維が少ないため細くなりがち。だから、太さや強度が一定な糸にするために、必ず元と末をウムようにする。

ヨリを掛けるのはウム場所だけで、残りの部分はそのままにして、とにかくどんどんウンで長くつなげていく。ウンだものは元から桶のようなものに、くるくると円を描いて溜めていく。

最初は糸ほど細いものは難しいので、紐くらいの太さにしましょう。

糸ヨリ

長くうんだ後で、ヨリを掛けながら糸巻きをする。全体に糸ヨリをするのは、糸巻きと同時にしないと、こんがらがってしまう。糸巻きをする人と、糸ヨリをする人の2人でやるとよい。

今回は短いので、親指に巻き取った

糸車という道具を使うと、糸を撚りながら巻き取ってくれるらしい。インドの糸車のチャルカは有名ですね。

あんぎん織り

1目2センチに刻みを入れたあんぎん織りの台

あんぎん織りは、古くからある織り方で、ゴザやムシロの織り方と言えば分かる人もいるだろう。経糸の両側に木の重しを着けて、写真のような台に下げる。木の重しに糸を通す穴を開けて、糸を通し、長過ぎる分の糸は木の重しに巻き付けて、端っこをセロハンテープで留める。(写真みてね)。台に横糸を渡し、重しの木を持ち上げて経糸を交差させ横糸をはさみこんだら、さきほどと反対側に重しの木を下げる。経糸の交差の仕方は、常に同じにすること。1段目と最終段は全織り。それ以外は1段ごとに偶数目、奇数目を織る。経糸が足りなくなる場合は、巻き付けておいた糸を伸ばし、それでも足りない場合は次の糸を結び付ける。横糸が足りなくなったら、次の段に新しい横糸を渡す。飛び出た横糸は、仕上げの段階で切りそろえる。

今回は、100mm x 150mm ほどのものを作った

縄文小屋

カラムシの魅力に目覚めたのは、真脇遺跡での、縄文小屋の茅葺き替えを手伝ったとき。

茅をヤナカに縛り付ける縄は、縄文館で何年もかけて作り貯めてきたカラムシ(チョマ)の繊維でなった縄。滑らないのでさばきにくいけど、その分とても良く締まる。そして強い。畑や土手の強害雑草と思っていたチョマが、こんなに優れた縄になるのは最高だ。

縄文小屋
叉首(サス)構造の横架材の屋中(やなか)に巻いてあるのがカラムシの縄

高田館長によれば、常に濡れるような場所では、耐久性に劣る。その点は、綿の縄と同じようなものかと思う。

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