木造の日本家屋を改装して粘土の厚壁を作りたいなら、コブよりも藁版築"light straw clay"の方が向いているような気がする。コブと同様日本語の情報や文献が見当たらないので、まとめてみる。

概略

コブの仲間に、藁版築"light straw clay"と呼ばれるものがある。これは、最小限の粘土で藁をコーティングしたもの。最小限とは、藁がお互いにくっつく程度に多く、かつ、粘土がだまにならない程度に少ない量。藁をスパゲティとしたら、水で溶いた粘土をソースのように絡めて作る。これを型枠の中で叩き締め、のち型枠を外す。

この素材は内壁として使いやすいが、分厚く作るなら外壁にも充分使える。この壁はコブに比べてはるかに断熱に優れるが、壁/屋根重には耐えられないので、木造建築の技術が必要だ。

Green Home Building: Cob

型枠の中で叩くという工法は、版築と似ている。藁粘土でつくる版築。軽い素材を木組のなかに入れて、断熱性に優れた垂直な壁を作れる。

藁版築(light straw clay) の作り方

奥には壁の高さの仮板、手前には高さ60cmの仮板。その間にlight straw clayを保持する垂直支柱が見える。壁内の空間を隙間無く埋めるために、一度に60cmの高さで圧縮する。手前の仮板のてっぺんまでlight straw clayで埋めたら、手前の仮板を外して60cm上げて固定し、また埋める。壁の高さいっぱいまで埋まったら、奥の仮板も取り払う。

藁には空洞があるので、藁で作るときは撞き固める。藁の代わりに木片や鋸屑を使うときは、空隙が出来るように、緩く詰める。

EcoNest – Form Work | TRC Timberworks

後日談

60cmは欧米人サイズかも。やってみたら、高さ40cmの板で、手の長さに対してちょうど良かった。

藁版築(light straw clay)を支えるために、壁に垂直支柱を配置する必要がある。重量を支えられるだけの小さな直径の、角材、竹、などが使える。垂直支柱は60cm毎に設置し、構造部材に取り付ける。

高さ60cmの仮の板を、垂直支柱と垂直支柱の間に渡し止め、藁粘土を叩き込んでいく。この板のてっぺんまで来たら、板を上に移動して、同じことを繰り返す。乾くのを待たずにどんどんやっていい。力一杯叩く必要はないが、ある程度圧縮される必要はある。屋根の真下まで行ったら、板を外側だけてっぺんまで上げて、内側は半分だけ上げ、叩き入れる。内側の板をちょっと上げて詰めて叩いてを、てっぺんまで繰り返す。最後は1時間静置してから、板を取り除く。

1週間乾かしたら、同じ材料で、開いた隙間を埋める。埋める場所を濡らしてから埋める。

壁が完全に乾くには、厚さ2.54cmにつき1週間かかる。その前にびしょ濡れになったり、凍ったりしないようにする。

Building a Light Clay Straw (Straw-Clay) House | The Year of Mud: Natural Building Workshops

壁の厚さは30cmまで。

地面からは最低20cm離れていること。

壁の厚みは、基礎からはみ出してもいいが、5cmまで。

木造部と藁版築(light straw clay)は直接触れていてよい。

ATAC pdf

後日談

壁の厚さは30cmまでってことの、理由はなんだろう?

実際に30cmでやってみたら、これ以上厚いと乾く前に腐りそうだなと感じた。

壁を乾燥させる間に、藁の中から芽生えがあることもある。芽が枯れたら乾燥した合図、壁に漆喰や板壁をつける準備ができた頃合い。

石灰や粘土の漆喰で表面を仕上げるのが一般的。これはカビや腐敗から壁を守るのに役立つ。

外装には下見板を張るのもいい。

Endeavour

藁粘土(straw clay mix)の作り方

なるべく純粋な粘土をバケツやドラムに水と共に入れ、混ぜる。多すぎた水を除くことはできないので、水は少しずつ足す。目安は、粘土をバケツの半分まで入れたら、水はバケツの4分の3まで(ひたひたくらい)。クリーム状になるまで混ぜる。砂や石は底に沈む。これを6~7mm目の篩いに通すことで、不純物(有機物、石、砂)を取り除く。できたものを粘土溶液(clay slip)と呼ぶ。藁を板の上にバラバラと置いて、粘土溶液を上に注ぐ。粘土溶液はちょっとでいい。サラダにドレッシングを掛けるくらいの量。これをフォークで放り投げるようにして混ぜる。タープの上に置いて、サラダをボールの上ではね上げて混ぜるように、材料を放り上げて混ぜてもいい。すべての藁が粘土溶液でコーティングされるまで混ぜる。

Cob Builders Handbook

後日談

3mm目の通しでも、砂やシルトは通ってしまう。今回は粘土の純度を上げるために、1.5mm目の通しを作ってみたら、藁への食い付きがよくなった。

適切な粘土の土壌を見つけ、水を加え、塗料の様な粘度になるように混ぜます。

  • 粘土を予め浸水すると、混合が容易になる。
  • 混合の前後でフルイに通すと、藁と混ぜやすくなります。1/4inch(6.35mm)のフルイで十分です。
  • ちょっとずつ、何回にも分けて作る方が、より均一な仕上りになります。

Common Earth

地面から粘土を取って使うなら、粘土が25-50%含まれているものを使うこと。藁はどんな作物でも可。3-15cmの長さに切ったものが理想的。

いろんな混ぜ方があるけど、私たちのワークショップでは、手で混ぜるのが一般的。

Endeavour Sustainable Building School

窓など開口部の作り方

larsen trusses

窓など開口部には、この図のような larsen trusses を使う例が多い。

壁の両側に柱を立てるので、ダブル・スタッド(二重木枠)と言われる構造をしている。

ツーバイフォー工法の模式図

ダブル・スタッドに対していうと、こちらはシングル・スタッドということになる。

参考書籍

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