チェーンソーで杉の丸太は真っ直ぐ切れていたのに、ケヤキの大木は斜めに切れるというか、ほとんど切れないという経験をして、チェーンソーの刃の研ぎ方を徹底的に研究しなおした。

斜めに切れるというのは、チェーンソーのカッターが左右どちらかに偏って切れ込んで行くということ。

能書きはいいから、手っ取り早く教えてくれ、という方は、一番の理由をどうぞ。

チェーンソーの切れ込む仕組み

以下の図は全て、チェーンソーを振り下ろして木を切る際のカッターの見え方。また上下左右は、切っている人から見た方向を指す。

上図のカッターは右下に切れ込もうとする。右と下に刃があるため、刃のある方に切れ込むからだ。これを右カッターと呼ぶことにする。

上図のカッターは左下に切れ込もうとする。左カッターと名づける。

左右カッターの均衡がとれていると、真っ直ぐに切れ込んでいく。

左右カッターのバランスが崩れていると、上図のように片側に切れ込んでいく。

片側に切れ込む原因

左カッターの研ぎが甘く、右カッターだけ砥げてるとしたら、

1.切れる右カッターだけが切り込むので、右側へ曲がっていく

2.切れない左カッターは進まず、右カッターだけが進むので、左に曲がっていく

どっちもあり得る。

だから、どっちやねん!

というツッコミが聞こえて来るけど、条件によって変わってくる。チェーンの張り具合、チェーンオイルの出具合、切る人の姿勢や持ち方、上刃と横刃のバランス、左右カッターの長さ、など。

原因1.左右カッターの、片方の研ぎが甘い

上図の場合、右カッターはよく砥げて光っているが、左カッターは鈍い光沢で研ぎが甘い。この場合、切れる右カッターだけが切り込んでいくので、右に曲がってしまう。

原因2.左右カッターの長さが違う

左右カッターのどちらかが長いと、長いカッターの方に食い込む。右に切れ込む場合は、右を削るカッターの方が長い。

左カッターが砥げていて、右カッターが砥げてない場合、原因1.によると、砥げている左カッター側に切れ込む。だけど、右カッターが長いと、逆に右側に曲がっていってしまう。

原因3.チェーンの張りが緩い

チェーンの張りが緩いと、刃の切れ味の差でカッターがガイドからせり出して、余計に曲がってしまう。

原因4.チェーンオイルが出ていない

チェーンオイルが行き渡っていないと、焼け付いて切れなくなり、余計に曲がってしまう。

原因5.中途半端なアクセル

チェーンソーの切れ方が曲がっていって困るのは、太い木を切る時。こういう時は、アクセルは全開にするのが基本。アクセルを半開きだと、余計に曲がってしまう。

直し方

カッター先端の丸くなっている部分はすべて削り落とす。

ソーチェーンの刃も、刃物一般と同じように、返しが出るまで研ぐ。ちゃんと砥げた刃は隅々まで光っていて、途中で角度が変わったりしない、刃先が別角度に光ったりしない。

これをとにかく、カッター1枚1枚よく見る。新品のソーチェーンの刃と、見比べると分かりやすいと思う。

左右のカッターの長さが均等になるように、研ぐ。

カッターを1枚1枚見て確認して研ぐ。慣れないと長さの違いを認識できない。何度も研いでいると目が慣れて、長さの違いが分かるようになる。最初のうちこれは許容範囲かなと思うが、そういうのは間違いなく長さが違う。

石を切ってしまって、カッター2~3枚が丸くなったとする。その場合、丸くなったカッターを研いで削り、その他のカッターも合わせて短くする必要がある。もったいないけど仕様がない。

チェーンを適度に張る。

目安として指でつまみあげてもドライブリンクがガイドから出ない程度に張る。

チェーンオイルがきちんと給油されているかチェック。

ゴミを掃除する。

一番の理由

片方に切れ込んでしまう一番の理由は「砥げてない」から。

ソーチェーンの刃砥ぎは分かりづらい。刃が小さいのが原因だと思う。あまりに小さいので、砥げたかどうかが分かりづらい。

切れてるチェーンソーは、木に押し付けなくても勝手に切れ込んでいくので、ちょっと押し付けてるなと感じたら、もう砥いだ方がよいという合図。

また、たまに1年に1回砥げば良いと思っている方と出会うのだが、とんでもない。林業で働いている友人から、「俺が砥げば1日は切れ味がもつ」と自慢話を聞かされたことがある。そのくらい頻繁に砥がないと切れなくなる。堅木の場合、軽トラが1杯になる前に砥がないと、切れなくなってくると思う。

丸ヤスリの正しい使い方

丸ヤスリがもう磨り減って役に立っていないという場合もある。ヤスリをかけると目に見えて鉄粉が出て、ひと擦りごとにカッターの形状に変化が見られるのが本来。削れてないなら、新しい丸ヤスリを買った方がいい。

oregonヤスリ適合表

引用:oregon

でも、

じゃ、研ぐって何さ?何度ギコギコしても、手応えもないし、刃先も尖らないんだけど?

となる場合もある。

こういう力の入り方が正解

丸ヤスリへの力の掛け具合は、水平三分、上に七分。刃が上に持ち上がろうとするのを、もう一方の手で抑えながら研ぐ。

よくある間違い

正しい方向の力でヤスリを押すと、ギリギリゴリゴリという感触と共に、刃先が砥げるのが分かる。

ヤスリホルダーの使い方

でも切れるようにならないんだけど?

ヤスリホルダーを使おう。

ヤスリホルダー

ヤスリホルダーは、丸ヤスリがカッターに当たる位置を、自動的に調整してくれる優れもの。しかし、片手では使えない。両手で使おう。

両手でヤスリって、じゃあ、チェーンソーは誰かに抑えてもらうの?

万力にお願いしよう。

万力

チェーンソークランプか、テーブル万力か、Cクランプを2個で机に固定するとかでも良い。

万力に固定したら、チェーンブレーキをかけて、カッターを5枚ほど砥ぐ。チェーンブレーキを解除して、チェーンを動かし砥いでいないカッターを出して、また5枚ほど砥ぐ。

左カッターを砥ぐ
右カッターを砥ぐ

両手で砥ぐと、ヤスリがしならなず、砥ぐ角度も正確になる。奥になる方の手で引っ張る意識で砥ぐと良い。

私はヤスリホルダーは両手で使うものだと、知らずに数年損をした。ヤスリホルダーと万力を、是非試して欲しいと思う。 

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