そろそろ寒くなってきたので、ストーブの研究を再開。
ロレイナストーブ
Lorena adobe stoveというものがある。
身近で手に入る粘土に砂と水を混ぜた材料だけで、薪を燃やして調理するための装置を作れる。オクドサン(カマド)をどうやって作ろうか研究しているときに、土で作れる Lorena adobe stove に魅力を感じていた。
ところが、
ロレイナストーブの失敗
5年後に科学者達がロレイナストーブをテストした所、使い方次第ではロレイナストーブは焚き火より多くの燃料を消費する可能性があると判明した。
えぇっ; ̄Д ̄)/!
なんと、失敗作。
薪の節約という点では効果がなかったが、自分で簡単に直せる点や、煙突による排煙ということがよかった。
設計したアプロヴェチョ自ら認めております。(;゚д゚)
断熱材は熱が通過しないようにするが、 thermal mass は反対に熱を吸収する。テストを重ねると ロレーナストーブに使われる rammed earth は調理に向かうべき熱を吸収してしまっていることが判明した。
その後の設計では、 rammed earth は軽石などの断熱材に変更された。
よかった、ちゃんと改良されたんだ。
-
thermal mass - 土や石といった重い物体
-
rammed earth - 型枠の中で土を主体とした材料を搗き固めて、壁やブロックを作る建築技法
断熱と蓄熱
ロケットストーブに限らず、ストーブの燃焼効率を高めようとすると、「断熱」と「蓄熱」というキーワードが出てくる。我が家のレンガ製ぬくぬくベンチ型ロケットストーブは、燃焼炉と燃焼煙突に「断熱」効果に優れた珪藻土レンガを使った。私は、これ間違えたと思った。その後、燃焼炉内の壁に、「蓄熱」性を持つ耐火レンガを並べたらようやくロケットストーブ的に燃えるようになったからだ。
ガスが燃えるには、温度と酸素が必要だ。だからガスの通り道が「蓄熱」して500℃以上になっているべきだと思う。だけど優れた「断熱」効果を示す珪藻土レンガは、熱を反射する素材なので、耐火レンガのようなものと比べてそれ自体の温度が上がらず、ガスに着火できない。だからロケットストーブの燃焼炉に「断熱」材を使うのは間違いだと思ったんだけど、おかしい。
ロレーナストーブは熱を吸収するので、燃焼効率が悪いという話。なんでだ。燃焼炉が「蓄熱」するなら良いと思っていたが、逆だ。
追記:2023/3/2 - その後分かったこと。
断熱素材で囲われた空間は、熱が外に逃げず内部に集中するので、温度はより高くなる。逆も真なりで、熱は拡散すると冷える。
燃えるようになったのは、バーントンネルの断面積が減って、ロケットストーブに必要な寸法になったから。つまり、細長い空間で燃やすと、やはり熱が拡散せずに、その空間内に集中するので、温度はより高くなる。より高温になるほど、完全燃焼に近くなる。
ロケットストーブのしくみ
わけが分からなくなったので、Erica が描いたロケットマスヒーターの基本構造図を眺める。
rocketstoves - www.ErnieAndErica.info
そういうことか。
燃焼炉[BURN TUNNEL]は蓄熱素材のレンガや石の組構造で作り、「その周りを」断熱材で囲う。薪火と接する面は蓄熱素材なので、着火温度が維持される。触媒だね。触媒をより高熱にするためには、触媒の外側を断熱してやればいい。偶然だけど、我が家のロケットストーブもこうなったわ。だよねー。やっぱこうなるよねー。
ロレイナストーブとの違いは、「蓄熱素材より外へは熱を逃さない」ということ。ロレイナストーブには断熱材が入っていなかった。そしてストーブ自体が大きいから、ストーブ全体が暖まるまでずっと熱が逃げつづけるんだね。
よくあるキッチンロケットストーブの場合、ステンレス煙突を燃焼炉として使うけど、これが触媒。その周りに断熱材。という仕組みかな。
追記:2019/08/26
珪藻土レンガもアサヒキャスターも消耗品ですという記事で書いたように、内張りの構造体に耐火レンガを使うのは、蓄熱して触媒という以外にも、耐久性が高いという大事な理由がある。
追記:2015/10/25
さらには、ロケットストーブには珪藻土レンガ(キッチンロケットストーブ作るよ)で実験したように、断熱レンガ(珪藻土レンガ)でロケットストーブに必要な寸法通りにJ-tubeを組めば、触媒となる蓄熱素材の内張りがなくても、完全燃焼(便宜的に完全と書いておく)する。
二次燃焼
ロケットストーブでの二次燃焼は、燃焼煙突の入口~真ん中で起きると想像していたんだけど、Erica の図では、燃焼煙突の上の鉄板付近で二次燃焼している。なぜ鉄板に当たって冷えるところで二次燃焼するんだろう。PLASMA RE-BURN という表現がよく分からない。電離 再燃焼。何だろう。
追記:2020/11/3
長年の疑問「プラズマリバーン」が分かった。物質の状態には、個体、液体、気体の他に、プラズマという状態もあるのだとか。火はこのプラズマという状態。
つまり、「プラズマリバーン」とは、「プラズマ状態のガス(火)が再燃焼する」ということなのだと思う。
Ernie & Erica に二次燃焼についてのヒントが書いてあった。
短い、断熱された、そのためとても熱くなる煙突が、強い引きを作り、最上部にとても熱い点を作り、残ったガスが再燃焼して丸い輪のエネルギーの流れになる。
乱気流によるガスと酸素の撹乱を起こすために、鉄板にぶつけるという訳ではないようだ。鉄板の位置が問題というより、二次燃焼に必要な燃焼煙突の高さを確保しましょう、ということになるのかな。コントラフローと、やや似ている。
ここで言う short とは、外に出す煙突と比べると短いという意味だろうとおもう。
燃やし方 J-tubeの形の意味
図を見ていて、もう一つ気になるのは、木を縦に入れて、燃えているは先端のみ、というところ。ロケットストーブについての、よくある絵なんだけどね。
ロケットストーブの設計者といわれるLarry Winiarski の Rocket Stove Principles にその答えが書いてあった。
燃えている部分のみ(適切な量で)温めなさい。薪は完全燃焼を妨げる余分な量のガスや炭を出すべきではない。
もっと見ていると、この薪のくべ方をどこか別の場所で見た気がしてきた。これ、囲炉裏と似てる。囲炉裏は、火処(燃焼の中心)に薪の先端を置き、薪が燃えるに従って残った木の先端を火処へと送っていく。よく似ている。いまさらながら気づいた。囲炉裏で普通にやることが、ストーブという箱の中でも同じだ、ということになかなか気づかなかった。
木を、中途半端に熱すると、煙る。
当たり前のことだ。だけど、そのことと、
だから、燃えている部分だけを熱するようにする。
ということを結びつけて考えたことがすごい。設計者えらい。
ロケットストーブで薪を縦にくべるのは、燃えると自動的に薪が落ちていくので、薪が自動供給されるのだ、という解説がされることが多い。そんな機能いらねえと思っていたけど、煙らせないという別の重要な機能を担っていた。
参考
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ロケットストーブの原理や作り方の詳細な解説本
日本では、http://rocketstoves.com からPDF購入が出来る。 -
その日本語版
ロケットストーブの製作マニュアル日本語版 https://sites.google.com/site/rocketstovejapan/
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