土や砂、石、藁といった身近で手に入る自然素材で作る家、コブ・ハウス。蓄熱素材で分厚い壁をつくるのが特徴。最新の日本語情報が少ないので、英語の情報を日本語でまとめてみる。

インターネットは本と違って写真が豊富だ。実例写真を見て初めて納得したこともあり、おかげで考えを整理できた。

コブ・ハウスの外観イメージ

Jackie’s Cob House | Tiny House LIVING

石垣を基礎にした土の壁は蓄熱体。沢山の南窓で太陽熱を蓄える。自由な形の壁。自由な形の屋根。緑化屋根。

コブ・ハウスの内部イメージ

Cob houses | Moon to Moon

室内の形も自由自在。

分厚い壁ごしの窓からの光が印象的。

作り付けの調度品や棚の形に、凝ろうと思えばいかようにでも。

粘土に撥水加工をすれば、流線型の流しもできちゃう。

石灰壁と、白木のコントラストが美しい。

根太を使わない二階床の例

Mayne Island Cob House | theyearofmud.com

丸太梁と厚板で作る、根太なし構造は、建物の高さを抑えられる。多少床がたわんでも構わない人向け。

参考PDF:丸太梁の耐荷重 Allowable Loads for Round Timber Poles | UNIVERSITY OF ALASKA FAIRBANKS

丸太の上に直接ロフトの床板が乗っている。

コンクリ並みに強度のあるCob壁が丸太を支える。開口部はアーチや、まぐさで支える。

間仕切壁を抜けて、外壁まで丸太を通した例。

コブ・ハウスの構造

マザーアースニューズ|みんなで創る暮らしの雑誌

この概略図は、コブ・ハウスの構造をよく表している。地面に排水用の溝を掘り、溝に小石を敷き、ドレンパイプを設置、小石で埋め叩き、その上に石垣を積んで基礎とし、粘土と砂と藁に水を加えて混ぜたもの 「コブ」を積んで壁を作り、2階の大根太を途中挟みながら屋根まで壁を積み上げ、屋根部材を受ける。

コブ・ハウスの概略図。

(記事からの引用)1999年初め、あるフロリダの若い女性が、オンラインの記事を偶然目にした。泥の家で彫刻する古代イギリスの手法が近年復活しているというものだった。興味をそそられ、彼女は貯金をはたいて、5日間のワークショップのためにヴァーモントへ旅行した。そこで、粘土、砂、藁を足で混ぜて、材料の塊をこねてコンクリートと同程度の耐久性がある固い壁にする方法を学んだ。

フロリダに戻った後、彼女が習った技術を使い、友達数名と、両親の裏庭に小さな陶芸用の小屋を建てた。フロリダの湿った空気や豪雨で「泥の小屋」が大地に帰すると予想する人もいた。ところが、2002年のハリケーン・リリの後、この頑丈で小さな小屋は、費用わずか数100ドルで夏に少し作業しただけだが、近隣で崩れずに残った数少ない建物となった。クリスティーナ・オット(Christina Ott) はコブ建築というものを理解していたのだ。

コブ・ハウスの建築工程

Earthen Acresは、コブ・ハウスの建築工程を豊富な写真で紹介しているブログ。COB & ONにも出てくる家。彼らが建てたコブ・ハウスを、時系列にそって見る。

まずは(ほぼ)完成の図。東側外観。

西側外観。

床全体を掘ったあと、外周に沿って排水溝を掘っている。床全体を掘るのは、表土を取り払って、岩盤の上に家を建てるということかな。

さらに排水溝を掘る。上の写真の外周の排水溝から、外に伸びる部分。

排水溝にドレンパイプを置いて、採石で埋めたあと、石垣を積み始めたところ。石垣はコンクリ廃材を使っている。

モルタルはドアの下以外、使っていない。石と石の間の隙間をモルタルで埋めてもいいと思うが、作者はできるだけ産業資材を使わない方針みたい。石垣の上に載っている赤いのが、コブ。コブ同士がくっつくように、表面を凸凹にしておいて、この上に次のコブを積む。

コブの塊。これを1つずつ、上のように順次積み上げていく。

コブの壁が立ち上がってきた。写真の北側壁にはストローベイルを埋め込んだ。色の薄いとことがストローベイル。中空構造のストロー(藁)は、断熱素材として優れている。はめ殺しの窓を粘土の中に埋め込んでいる。

コブ壁が出来て、屋根が出来た。壁の仕上げ塗りはまだ。北壁のストローベイルがよく分かる。放射状の屋根梁。外階段は猫用。

床の調湿層は、まず大きめのコンクリ廃材を入れ、購入した採石を入れて、叩いた。

その上に床の荒塗り。砂6、篩ったもの(?)6、粘土1。

仕上げ塗りは、赤粘土と砂と馬糞と細かい切り藁。

馬糞は、馬が作る最高の藁スサ(切り藁)とともに、多少の粘性を加えてくれる。

家族が増えたのでコブハウスの南側に、木造で建て増し。

木造部分の(ほぼ)完成図。南側外観。左半分が石垣+コブを基礎にストローベイルで作った壁、右半分が煉瓦積みの上にlight straw/clay壁。

ドイツ式のlight straw/clay壁は、写真の様に縦に細長い空間を木造で作り、さらに写真にはないが仮の壁板を貼り、その中に粘土をまぶした藁を叩き込んで行く。日本の土壁と違って、厚い壁を作りやすい。版築と似ている。

お便り「light straw clay 藁と粘土で作る断熱壁

先に建てたコブハウスと、建て増し部分の境の壁は、取り払われた。コブ建築の柔軟なところ。

床の荒塗り。こちらは、粘土1:砂3。

木造部分の内側。石垣はコブで隠された。猫の足跡はこの後の仕上げ塗りで隠される。

石灰粘土の仕上げ塗りが荒塗りの上に塗られている最中。

壁の仕上げ塗りが終わった。床の荒塗りの上に粘土と砂と切り藁の混合物で最後の層を塗っている。境目を模様にしている。

ブログには記載がないが、参考書席によれば、このままだと床土表面はある程度固いものの柔らかくて、常に歩くところや椅子を置くところにはマットをしくなどの養生が必要。または、煮油を塗って粘土を高分子構造に変化させることで、実用に耐える固さにできる。

境目を目地埋めしたところ。土の床が削れないように色々敷いてある。椅子の下に布。流し元にラグマット。タンスの足の下に幅のある木。

Cob House は寒い地域に向いていないのか?

泥の家は、壁の厚みが60cm、良く断熱された屋根、戸や窓は熱損失の少ないものという条件ならば、アメリカのほとんどの地域でセントラルヒーティングやエアコンなしに、年間を通して室内の温度は3.3~4.4℃の変化しかしない。

– Glorious Mud, Gus W. Van Beek

 

コブは蓄熱体。主な成分である粘土と砂は熱を蓄える素材だ。コブの断熱性は限られている。しかし、蓄熱体は熱さや冷たさのバッテリーのように働く。つまり、コブは太陽や炎から熱エネルギーをよく吸収して、熱源がなくなったあともこれを蓄えている。コブを取り巻く空気の温度がコブの温度より低い場合、蓄熱体はバッテリーの蓄えを空気中に放出する。コブは大量の熱を蓄え熱源が失われた後で、長く熱エネルギーを放出しつづける。逆に言えば、日陰にあって熱を加えていない蓄熱体は夏の間ひんやりとし続け、周囲の暖かい空気から熱を吸収する(thus having a net cooling effect).

コブの利点は...

...メイソンリーヒーターやロケットストーブ(または薪ストーブ)の周りに蓄熱体として設置することで、コブは炎からの熱を吸収し、火が消えた後も熱エネルギーを保持する。

...パッシブソーラーデザインにおけるトロンビー・ウォールにコブを使うと、南窓からの太陽によって温められる。

...室内の建築材料として使うと、室内をひんやりと保つ。冬に室内を暖かく保つための蓄熱体が、ひんやりとしたい場合も同様に働く。

Strawbale vs. Cob...Not the Typical "King Kong vs. Godzilla" Story

と、言われても不安だったけど、石積みの家を計測して、納得した。

お便り「石積みの家を見学

よし、作るか。

参考書籍

参考写真

cobcottage.com - Yahoo!画像

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