念願だった石積みの家へ。石積みの家の中での暮らしを体験したくて、中でも早朝の寒い時間帯を肌で体験したくて、根岸さんに無理を言って一晩泊めていただいた。本当に行って良かった。どうもありがとうございました。以下は、石積みの家の性能計測と、体感と、積み方、それから人生のアドバイスについての記事。
母屋の造り
到着した日はとても良い天気で、日中の最高気温が17℃もあった。しかし、翌朝の最低気温はマイナス2℃。ちゃんと寒さを体験できた。
母屋の壁の表面温度
時間 | 外気温 | 北外 | 南外 | 北内 | 南内 |
---|---|---|---|---|---|
17:30 | 8℃ | 5.2~6.2℃ | 7.1~9.8℃ | 12~16℃ | 16℃ |
翌6:11 | 0℃? | 3.1~4.7℃ | 4.1~6.8℃ | 11.4~14.6℃ | 12.9~21℃ |
夕方と翌朝で温度の採り方が若干違うので、表の見方が難しくなってしまった。夕方は壁の上下に対する真ん中付近だけ温度を計ったが、翌朝は上中下で計った。また北内の夕方16℃というのはストーブの正面に位置する壁だったりする。その他にも違いがあるので、かいつまんで書くと、夕方に北内側で12℃だった箇所が、翌朝13.8℃だった。ヾ(。 ̄□ ̄)ツビックリ。確かに夕方温度を計ったあとも、ストーブを焚いていたけど、まさかここまで保温するとは。北外は、夕方最高5.2℃だったのが、翌朝4.2℃だった。外気温は8℃からマイナス2℃を経て、0℃だというのに。すごいね。
石壁の上に補強のためのガリョウという鉄筋コンクリートの部分がある。石壁に比べて、熱を通しやすいかと思っていたが、早朝壁の外の温度を計ったさいは、石部分と大差なかった。また、土で壁を作った方が断熱性能はずっと高いんじゃないだろうかと思っていたので、驚きの結果だった。そこで、帰ってからもっとよく調べてみた。
物質 | 温度[℃] | 密度[g/cm3] | 比熱[J/kg ℃] | 熱伝導率[W/m K] |
---|---|---|---|---|
花崗岩(御影石) | 20 | 2.6~2.9 | 840 | 3.8 |
コンクリート | 20 | 1.9~2.3 | 880 | 0.8~1.4 |
土嚢 (粘土質) | 20 | 1.46 | 880 | 1.28 |
粘土についての資料がこれといって見つからないのだが、土粒子を構成する主な鉱物の比熱は、0.80(石英)~0.90(粘土鉱物) J/k ℃で、乾燥状態では大差ない(kawada.co.jp)という話。
これらの資料から、石、粘土、コンクリでは、比熱(重さ当たりの蓄熱性能)は似たようなものだが、密度が違うので、単位容積あたりの蓄熱性能は、高い方から順に石、コンクリ、土。熱伝導率(断熱性能)はコンクリと粘土で同程度だが、石は多少熱を通しやすい。ということが分かった。
粘土に藁や鋸屑を混ぜれば断熱性能は一番高くなるだろう。しかし蓄熱させたければ石を使うのが一番良いようだ。
石壁に溜めた熱を補填するためのストーブ
ストーブは直接暖を取るという存在ではなく、石壁に溜めた熱がある程度以下にならないように、放熱した分の熱を補填するようにして使っている。
ソープストーンストーブは本体約1トン、基礎コンクリート約1トン。しっかり蓄熱して、じわじわと放熱する。
こちらは、ソープストーンの前に使っていたストーブ。技術専門学校の溶接科の卒業作品。
石壁の積み方
面(つら)が揃うように積むと強い。そのために石を加工する。縦目地、横目地が直線にならないように積む。控えの部分が互い違いになるように組めれば理想。石壁の厚みは母屋・離れともに45cm。目地材はコンクリモルタル。
いろいろ
風呂と便所は別棟。母屋と屋根でつながっている。この屋根の下に、風呂の焚き口がある。焚き口の位置がこれだけ下がっていると、風呂桶を低く抑えられていいな。
屋根のある屋外というこの場所は、炊事場の延長でもある。
離れの樋からの水は、下の畑へ直接供給される。これいいな。
人生のアドバイス
ここからは、個人的な話。夕食をともにしながら、また翌日の朝食をゆっくりと取りながら、あれやこれやとお話させていただくなかで、あぁ私は石の組み方よりも、このために来たんだなと腑に落ちるようなアドバイスを幾つもいただくことができた。
人間の細胞には、解糖系とミトコンドリア系とがあり、ガンというのは解糖系の細胞が、今やっている何か、暮らし方とか、ブレーキを掛けるために自己防衛として作り出しているという話をしていただいたときに、この春突然私の皮膚が痒み出し、原因が分からないでいるということを言った。それこそ解糖系のブレーキだという話になり、なにかストレスが溜まっているのだ、遠い問題の場合もあるし、気づいていない場合もあるけど、と。実はここのところずっと、朝3時に目が覚めて眠れなくなっていることが頭に浮かぶ。目が覚めたら考えてしまうのは、毎朝同じ。今やろうとしている家の改装を、今の計画のまま進めていいのどうかという迷い。
今の家の間取りや柱の位置、台所や便所の位置、おかしな作りだと思っている。その中で、理想とする家の作りを改装によって実現しようとしても無理があるとも思っている。でも無理をやろうとしていた。そうすると不安になるのは、中途半端な家だなという想いと共に暮らし続け、何年か経ったら、やはり本物を求めてゼロからやり直すことになるんじゃないだろうかという想い。それならいっそ、もう家を出て、別のところに家を新しく建てた方がいいんじゃないかという想い。双方の想いの中で揺れ、悩んでいた。
その迷いを話したら、それは難しいねと頷き、実は根岸さんご夫妻も、あることが原因で、作っている途中の石壁を壊して出ていこうかということもあったというお話をしていただく。「その時私たちが選んだのはね。無理はしないということ」。「逆らうとね、どこかでツケが来るよ」。
帰りの車の中で、無理やりかもしれないという部分については、やはり無理をしないでおこうと決めた。そして、今まで家に手を入れて来た何年間かは無駄だったんだと否定する気持ちを、取り払っていただいたことに気づいた。無駄じゃなかったんだ。そしてこれからも無駄じゃない。「無理はしない」と決めたら、なぜだか何でもできるような気がしてきた。不思議。
そしてまた別の話。今の世界になぜ、もっと若いうちに、飛び込まなかったのかという後悔を持っていると言うと。「若い間は、どんどん細胞分裂をして、より新しいもの、より広い世界、もっともっとというのが、人間なんだ。若いうちに自然の中でゆったりと、日々何も変わらず淡々と、という生活が心地よいと感じていたら、おかしいよ。」「あなたが、その時期に、始めたんだったら。それは一番いい時期に、始めたんだよ。」と言っていただいた。涙が出た。うれしかった。厚次さんが、離れが出来るのに10年も掛かったというのに、65歳になった今もう1棟建てるつもりでいることにも、勇気をいただいた。これでいい。
最後に
信念とは、できる出来ないを考えるのではなく、
ただ、ただ、続けること
根岸厚次
ありがとうございます。
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